法話板

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7月のおだいしさまのことば

本文は遣唐使の一員として唐に渡ったお大師さまが困難な航海の様子を記したものです。5月の中頃に難波(大阪)を出帆してから、8月10日に現在の福建省赤岸鎮に漂着するまで、実に2か月以上かかっています。その間、4隻の船団は散り散りになり、唐にたどり着けたのは2隻だけでした。

密貿易船か海賊船かと怪しむ現地の役人に対し、遣唐大使が差し出す文をお大師さまが起草したのです。本文はその一節です。提出された啓白文は唐の役人を動かし、一行は国賓として長安へ向かうことになったのです。

さて、なぜこのような危険を冒してまで長安を目指したのでしょうか。お大師さまが求めたのは、仏教の神髄である教え、密教でした。長安は密教の中心的都市だったのです。お大師さまは以前、奈良の久米寺で、かつて遣唐使が持ち帰った密教の経典に出会い、独学で理解を進めました。しかしこの経典には直接、師から身を以て伝えられなければ分からない部分が多くあったのです。具体的には真言の唱え方や、仏さまを象徴する印の組み方などでした。お大師さまは悟りを実現するために密教の核心をどうしても学びたかったのです。密教はお大師さまによって真言宗として日本に伝えられ、多くの人を悟りに導く教えとして今の時代に引き継がれています。