法話板

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10月のおだいしさまのことば

本文はお大師さまが時の皇太子(後の淳和天皇)の要望にこたえて筆を作り献上した際の文書です。

腕の悪い職人は自分の力量が不十分なことを棚に上げ「道具が悪い」と言い訳をし、書の下手な人は「筆が悪いからだ」と自分の力不足をごまかそうとします。腕の良い職人になるためには道具の取り扱いのイロハから始め、しっかりと経験を積み上げ、仕事にふさわしい道具を自分の手足のように動かす力を養わなければならないのです。そうした時間のかかる努力の積み重ねが良い結果を生み出すのでしょう。努力をせず期待する結果だけ求めても成功することはありません。

書をたしなむ人は筆の良し悪しを正しく見抜き、併せて書こうとする文字に最適な筆を選ぶ能力も必要です。良質な筆を見極める力量も良い字を書く力の一部でありましょう。

お大師さまは三筆の一人にあげられる書の達人です。本文にはたゆまぬ努力の大切さを思うお気持ちがにじみ出ているように感じられます。