7月のおだいしさまのことば
真言宗の重要な経典『大日経』では、「悟りとは〈実の如く自心を知る〉ことである」と説いています。本来、我々は心の中に仏・菩薩などの性質を備えています。しかし、あたかも月に雲がかかるように、煩悩に翻弄されている人は、この本質が覆われて隠れています。そのため、いつまでもこの真実に気づけず、いっこうに迷いの世界から逃れることがないのです。
言い換えれば、自心の在り方を正しく観察することができれば、清浄な仏心に気づくことができます。そしてそれは同時に、すべての生き物にも仏心が宿っている、という真理に辿り着くことであり、根本的な平等を悟れます。
ところで、「自」と「心」を繋げると、「息」という一字になります。これは「いき・うまれる・そだつ」などを意味し、生命と強い結びつきを持った漢字です。興味深いことに、息が上がれば心が苦しくなり、心に負担がかかると息が乱れるなど、身と心の相互に影響が生じます。「病は気から」という言葉もありますが、心を整えることは、身体的にも大変重要であるといえるでしょう。
自心の深奧を求めて、諸仏に出会う。悟りへの入り口は、自分の一番近くにあることを忘れないでください。